今日、読んだ本「八甲田山死の彷徨」




八甲田山・・・
2000年4月僕は長野の太郎山トンネル工事所から八甲田山トンネル工事所に異動となった。
結婚したての僕は妻とともに長野から青森に来たのだ。
僕は「八甲田山」という名前を聞き昔、陸軍の多くの方が厳冬期に訓練中に亡くなったことを思いだした。

春に着任し工事を開始すべく現地踏査、測量、工事関係書類、計画書の作成、品質・工程・検査・環境などの計画を行った。
毎日遅くまで計画と現地の準備工事を行った。
秋にはいよいよ八甲田のドテッ腹を抜くトンネル工事の開始だ。
この八甲田トンネルは東北新幹線のうち八戸から新函館駅までの区間の工事であった。我々の工区は本坑に進むまでの斜坑1.3km、本坑7kmの工事であった。

「八甲田山にこれから挑むのだ」

ものすごい緊張と意欲に燃えて工事に挑んだ。
完成すれば陸上トンネルとしては世界最長の26.4km

工事は当初順調であった。
冬を迎えた頃、作業員の手抜き工事が判明し、その修復工事をするという信用問題にかかわることが起きた。同時に地山の状況も悪くなり、トンネル内に毎分5tの湧水が出た。しかも地山や崩壊し作業はできず、とにかく地山に薬液を注入してその部分を超えた。吹雪の時には、休憩所からトンネル坑口から500mしか離れていないのにホワイトアウトで遭難する作業員や現場監督もいた。

とにかく寒くて痛い。
トンネルの中は暖かいが屋外作業をすると本当に痛い。
手がバカになる。足の指も痛くなりそしてだんだん感覚がなくなる。
現代の装備だってこの寒さに耐えるのは難しい。
そこに現れる困難の数々・・・死の彷徨をしていた当時も気がふれて裸になって死んだ者や立ったまま眠り死んでいくものも多かったようだ。

自然の中では人間なんてあっという間にやられてしまうことが嫌というほど痛感した。

しかし当時の八甲田の悲劇は果たして過酷な自然が原因なのか?
同じ条件で同じ時期に弘前から厳冬期の八甲田を渡った者たちがいるわけだから…自然がすべての原因ではないだろう。
人為的ミスによるものとする見解が強い。

「八甲田山死の彷徨」
を読むと組織の崩壊にかかわる重要なヒントが描かれている。
私がかかわる組織にも当てはまる、とても良い教訓が書かれている。
指揮系統がおかしくなったり、構成人達の意志がバラバラだったり
その場しのぎの計画だったり…また悲観的な感情が隊にどんな影響を与えるか、無計画な楽観視はとても危険!など組織マネジメントをする人には有益な本である。

雪中行軍隊で無事帰還させた徳島大尉が言った言葉「将校たる者は、その人間が信用できるかどうか見極めるだけの能力がなければならない。~中略~他人(ひと)を信じることができない者は自分自身をも見失ってしまうものだ」というのが心に響いた言葉である。

現代も昔も厳しい環境で100人以上の人間と良好な関係を築きながらプロジェクトを進めるのには、構成する人々の役割と信念がないとおかしくなる。そんな状況をたくさん見るにあたり、以下のことを徹底させるといいようだ。

(1)目的の明確化
(2)なぜその目的を達成する必要があるのか?を明確にする
(3)何事も偶然ではなく必然である
(4)部隊内で不穏な発言(嘘、陰口など)があった場合その者の処分
   早期に実施する
(5)なるべく部隊内の情報はガラス張りにする

当たり前だが、これらのことが徹底できていない組織は稚拙であり崩壊する。たくさんの組織を見てきたが、僕自身もそう思う。大手の会社ほど散見される!!ホントたくさんの「嫌」な体験からも学ぶことが多い!!!


ぜひ読んでみてください。

以上!


Posted by 福士健太郎 at 00:55│Comments(0)
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